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富士山登山の行方 Vol.3

山頂アタック

 12時30分、いよいよ山頂アタックを開始した我々ですが、荷物はどうたったのかというと(Vol.3からは文章の頭に1文字分のスペースを入れてみるという気まぐれ)
 私は足腰の負担軽減を考慮して、メインザック(GREGORY ZULU35)から軽量のサブザック(今回はSALOMON AGILE6)に切り替えて、雨ガッパの上衣、行動食、ドリンク、小銭、デジタルカメラ、360°カメラ、それと、この時点でのシークレットアイテムを携行するカタチにしています。
 メンバーそれぞれがザックを軽量化したりアタック用ザックへの切り替えを行いましたので、チェリー登山部は、その恩恵を受けてというか予測したとおり、サクサクと軽快に登り始めました。

ザックの軽量化は今後の課題ですね
【荷物の軽量化について】
 やはり、荷物の重さというのは体への負担がダイレクトで、当然、軽くすればするほど足腰への負担が減り、動きが軽快になり、特に登山という上り下りが連続する環境では、重要なファクターとなってきます。
 約9年前にOMMというマラソンレースが日本に上陸しているみたいですが、近年のUL登山ブームも相まって、このOMMの装備についての記事をよく見かけるようになりました。私は山の中でマラソンする気はないんですが(少し興味あり)、しっかりと天気やルート読んで、考え、必要に応じた行動を取れば起こることがないような不安が先行する装備を除いた登山がしたいなあと、改めて感じているところです。
 (今回はミスってますし、無駄な持ち物が多すぎました。それは後ほど↓)
 何事も「挑戦」してみて経験し、それを糧にして次を目指すことが成長につながるんでしょうね。
 だから「失敗」と言わず「挑戦した結果」で済ませればいいんじゃないでしょうか(笑)
 ええんかな、ま、ええか(笑)

登山人生初のイベント

 山頂アタックの道中、富士山の山道はズーーーーーーーーーっとガスだらけ、つまり雲の中にいる状態ですね。
 もちろん富士山頂は見えなくて、でも、今年50歳の誕生日を迎える記念登山なので、山頂には至りたいと思っていたわけです。
 そんな矢先に九号五勺の胸突山荘に到着、「たぶん九号目と頂上の間だから五勺なんだろうなあ、このパターン、七号目のときとは違うかもだけど、似てるなあ、このパターンは経験してるから心理的にはダメージないぞ〜(笑)」
 と、みんなが余裕をのぞかせます。頂上までほんとにあと少しのところまで来ています。
 (胸突山荘の標高が3590mで、剣ヶ峰までは高さだけで計算すると残り186m)

 胸突山荘を足早に出発した我々は、
 「あと少し」「もうちょいだ」「もうだいぶ頂上に近づいてますよ」
 そんな言葉を掛け合いながら、やはりサクサクと登っていきます。
 息が上がりはするものの、荷物軽量化の恩恵はすごいもんですよ。

 ・・・ポツリ
 ・・・ぽつり、ポツリ
 ・・・ポツリ、ぽぽぽぽポツリ

 ん?!雨?
 「・・・雨ですね」
 どうする。
 この雨ならばまだ行ける。でもこれ以上になったら。
 上りはまだいいけど、下りの危険度がめちゃめちゃ上がる。雨量が増えれば他の危険因子も出てきますね。
 そんなことを考えているうちにドンドン雨量が増えてきたので、「雨ガッパを着ましょう」と。
 私はこのとき自分が完全にミスっていることを認識していたんですが、それは雨ガッパを上衣だけ携行していたということです。
 これは、私の登山パンツに撥水性があること、天気が曇り続きで、多少の雨ならば耐えられるだろうと、安易に考えたことが一番の原因です。
 雨は容赦なく降り続き、はじめはそれに抵抗して撥水していた登山パンツを軽々と貫いてきて、インナーまで濡れる羽目に・・・そして、着替え用の登山パンツは家に置いてきたしなあ、と。(一式、雨対策で持ってきましょうとは言ったものの・・・トホホです)
 富士山の雨は、とっても冷たいんです。冷水です。おまけにこのときの雨は、雨粒がめちゃめちゃデカイんですが、これが想像よりも遥かに大きな雨粒で、雨ガッパをバチバチと打ち叩いてきます。 
 雨ガッパを着て少し登ったところに、山道が180°折れていて少し広めでフラットな場所があったので、そこに集まりました。
 雨量が増し増しになってきているなか、判断に迷っている時間はなさそうで、山頂までの時間、万年雪山荘までの下山時間を考慮して、途中下山を決断しました。
 「残念ですが、撤退しましょう。これ以上は危険なので、下りましょう。」と。
 山頂での思い出よりも皆んなが無事に帰ることが大事です。(今は冷静なので、こんないい感じに書いてますが、当時は言葉にできない複雑な心境でしたね。)

※私自身、登山を始めてから十数年経ちますが、山の中で雨に打たれたことは初めてで、なので、雨が降って雨ガッパを着るなんてことも、もちろん初めてなわけです。
 これが、良い経験になったと考えられるようになったのは、この登山が終わるころのことなので、またそのときに話しましょう。

https://youtube.com/shorts/vNAyNkbEFZk?feature=share

ネガティブから抜けられない

 山頂アタックは断念、晴れ男だと豪語していた自分のビッグマウス、何より、50歳のお祝いを山頂で計画していたのに決行できない悔しさ・・・ぐぬぬぬぬ
 表しようのない感情と、当てどころのない気持ちで、ほぼ無言&無表情のまま万年雪山荘まで一気に下山します。
 そして、13時40分ごろ、万年雪山荘に到着すると、さっと片付けをして、これからの予定を少し話して、でも、ネガティブな感情が回復せず・・・あー
・・・「もう喋りたくないんで、寝ます。」
 自分でもびっくりするぐらいの感情爆発で言い放ち・・・ふて寝・・・
 チームの皆さん、その節は私のことを見守ってくださりありがとうございます。
 そう、ふて寝です。私、ふて寝しました。ごめんなさい。
 これが、「まあほんとに私の登山の歴史にはないネガティブイベント・・・」だったのです。

寝床と仮眠と音と

 15時ごろだったでしょうか。
 「ゴツ、ゴツゴツ、ごつ、ごつドサ、ばさバサ、ドス、コン」で目が覚めます。
 他の宿泊者が通路を歩いている音、ザックなどを降ろしている音、山荘のスタッフが寝床を案内している声、いろいろな音が聞こえてきて・・・寝れねー
 さらに、近くの部屋でしょうか、「ざわざわザワザワ、バッサバサ、ごそごそグシャクシャ」と、どう考えても迷惑な大きな話し声と片付け?の音・・・寝れねーよ、静かにしてくださいや
 少しボリュームを落としてもらおうと、何回かカーテンを開けて見てみるんですが、どこの部屋で喋ってんだかわかんないわけですよ。無音は無理なのわかってるんですが、休んでる人がいると思って、配慮ある行動をしてもらいたいですね。
 せっかくの富士山登山、見ず知らずの人がカーテンを隔てて寝るという特殊な空間を、逆に楽しんでもらいたいくらいです。
 それにしても、雨は止んでいないようでしたね。
 寝床の個室に入ってくる登山者さんは、みんな雨に打たれて登ってきているようでした。
 それは大変だったろうなと。
 そんな「音」を聞きながら、私はいつの間にか寝ていました。

起床と同時に

 起きてメシ食べましょうかと決めた17時に起床して、ボーーーーーです。
 雨にバチバチに打たれた衝撃と、ふて寝した罪悪感で、ボーーーーーーです。

 ボーーーーーーとしてると、仲間から声が掛かります。
 「外がすごいことなってるぞ」と
 「ん?」

 わけもわからず外に出てみると
 どーーーーーーんと、この天気この景色ですわ
 「ほんまかいな(笑)」ですよ

万年雪山荘
宝永火口
九合目からの
反薄明光線というレア現象だそうです

 もうほんと美しくて言葉が出ませんでしたね。
 曇って雨模様だった私の気持ちは、この天気この景色で一気に回復です。
 それと、なんだか富士山の影がこちらに伸びてきているように見えますが、これ、調べてみると、「反薄明光線(はんはくめいこうせん)」というみたいです。
 レア景色・・・
 
 なんですか、この流れは・・・
 なんなんですか、このシチュエーションは・・・
 期待していいっすか。
 明日の天気が気になり過ぎてしょうがないです。
 天気になってくれ。
 ただただそう願い、チェリー登山部、夕食に入ります。

温かい食べ物が食べられるって、こんなに幸せを感じるんですね

 温かいお茶、スパイスの効いたカレーに舌鼓、しっかりと栄養を摂って、今日の日のアレやコレを話し、次の日のリベンジ山頂アタック計画を立てて、各々が各々の時間を過ごします。
 そして、夜、見てください。この夜景。
 少し肌寒くなってきた3460mの万年雪山荘から見る夜景は格別です。
 めちゃめちゃ綺麗です。
 携帯カメラで撮影しましたが、そのフィールドにいることで得られる感覚と、人間の目に写る映像を撮影することはできません。
 このフィールドにいる者だけが得られるモノがここにはある。ここにしかない。

 お天気を気にしながら20時に消灯を迎え、30分後に就寝するのでした。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回「富士山登山の行方Vol.4」をお待ちください。

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